一口に設計と言っても、ひなたデザイン設計では、プロジェクトごとに色々な関わり方をしています。最近「設計事例」に加えた、「京の意匠をもつお宿」は、外観のイメージスケッチのみを描かせていただいたものです。
建て主の要望は「京町家風」。。。
「風(ふう)」というのは、通常ですと表面のみを似せてつくるということなので、
ひなたデザイン設計では、基本的にはやりません。
しかし何かを習得したり理解するためには、まずは真似をすること、と言われています。
実は以前より、自分は人の真似をきちんとしたことがないな、というのが自分の課題としてあったので、今回は「ちゃんと真似する」ことに挑戦しようと思いました。
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そこで、これまで漠然と眺めていた京町家の意匠(いしょう。デザイン)を集中して観察。
自分事となると急に色々見えてくるものです。
京町家の何が京町家らしさを出しているのか。
まずはやはり格子。これは奥が深いですが。
それから、素材感、しっとり感。そして大事な要素として、軒の低さと水平ラインの印象、というのがあると考えました。
ところが、今回の既存の建物は、比較的高さのあるものでしたので、はじめは正直、どうしたものかと思いました。この素材、プロポーションの建物を「京町家風」にすることなどできるのか。。。
予算のない中、限られた要素でそれを実現する方法を、と頭をめぐらせました。
予算上、背の高い建物を低くすることはできないが、人の視線や意識を低く抑えることなら、できるのではないか。下屋(※1)の軒先でなるべく低い水平ラインをつくり、足元のしつらえで、訪れる人の視線を下に落とす方針としました。
それを言葉とスケッチで表したのが今回のイメージスケッチでした。
これを建て主の方が気に入って下さったおかげで、今回のプロジェクトは進みました。
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材料の寸法は迷いどころ。元の建物の高さが大きく、新建材の素材感がどうしてもところどころで見えることになるので、今回は、
全体的に実際の京都に建つ町家よりもひと回り太い材とした方がバランスがいいのではないかということと、
アプローチの植栽やしつらえも重要であることをアドバイスとしてお伝えしました。
今回のひなたデザイン設計の役目はここまでです。
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最終的な形を実現させたのは、職人の方々の力量です。
左官職人の池田さんが、大工の小島さんや造園屋さんの協力を得ながら、各部寸法やデザインを調整し作り上げました。
「風(ふう)」とは言ってもこの建物では、新たに加えられた部分に本物の要素が多く使われています。
前面につくられた下屋(※1)は、伝統的な木組み(※2)の技術で作られ、
外壁も左官職人の手による本物の漆喰、
外壁下部の木板は、手の込んだささら子下見板張り(※3)です。
アプローチの床も左官の洗い出しという技法です。
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「風(ふう)」からはじまったプロジェクトでしたが、近隣の方や、この建物を利用する方に、本物に触れる機会を作れたので、よかったのではないかと思っています。
ひなたデザイン設計としても、よい勉強の機会となりました。
これからも、職人の方々の手を借りながら、小さな要素でも、まちの中に本物のもの、自然の素材や伝統技術を散りばめていきたいと思っています。
左官と木工事:池田 和陽 、 木工事(下屋):小島工務店、 植栽・踏み石:森本庭苑舎。
※1 下屋(げや):建物本体に取りつく小屋根。
※2 木組み(きぐみ):仕口(しぐち)、継手(つぎて)といった、部材と部材をつなぐための伝統的な技術を用いて、木材を組み上げる技術。手仕事で木材に様々な形の彫り込みをつくり、木と木を噛み合わせる手法。
※3 ささら子下見板張り:板を少しずつ重ね合わせながら水平に張っていくものを下見板張り(したみいたばり)というが、ささら子下見板張りは、板を押さえる縦の材の裏側を1本1本ギザギザに架構しなければならないため、下見板張りの中でも手のかかる丁寧な作り方。
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